世界遺産 2026 新規登録をめぐる注目は、2026年7月に韓国・釜山で開かれる第48回世界遺産委員会に向けて高まっています。本記事では、現時点(2026年6月20日)で審議対象となっている33件の候補を一覧し、諮問機関(ICOMOS・IUCN)の推奨とあわせて要点を解説します。

重要: ここで紹介するのはいずれも「登録候補」です。諮問機関が登録を推奨(I)していても、委員会の最終決定は7月19〜29日の審議後に確定します。確定後は本記事を更新し、2025年の新規登録まとめと同様の形式に差し替える予定です。

第48回世界遺産委員会の概要

第48回世界遺産委員会(World Heritage Committee)は、ユネスコ世界遺産条約に基づき、新規登録の可否を審議する年次会議です。2026年は韓国・釜山7月19日〜29日に開催されます(参照:UNESCO 48COM)。

今回審議されるノミネート(申請書)は33件です。内訳は、新規候補29件、有意な境界変更2件、再ノミネート1件、前回差し戻しからの再審議1件です(資料:WHC/26/48.COM/8B 第2項)。なお、エチオピア・メキシコの2件は文書作成前に申請国が撤回しており、委員会での審議は行われません(同資料 第3項)。諮問機関は新規登録18件境界変更・再ノミネート承認3件を推奨していますが、委員会は独自の判断を下すことがあります。

緊急審議2件(南スーダン・ボマ=バディンギロ移動性景観、パレスチナ・セバスティア)は、この33件とは別枠で冒頭に審議される予定です(同資料 審議順序表・緊急処理枠)。

諮問機関の推奨コードの読み方

コード意味
I世界遺産リストへの登録を推奨
OK境界変更・再ノミネートの承認を推奨
D審議延期(defer)— 申請内容の見直し後に再提出
R差し戻し(refer)— 追加調査・修正後に再審議
N登録非推奨
withdrawn申請国による撤回

2026年世界遺産登録候補一覧(8B掲載33件)

以下は、WHC/26/48.COM/8B(2026年6月時点)のアルファベット順一覧表に基づく33件です。うち撤回2件を除く31件が委員会で審議されます。区分は申請時のカテゴリー、推奨はICOMOS(文化・複合の文化側)またはIUCN(自然・複合の自然側)の評価に対応します。ギリシャ・オリンポス山は文化・自然の双方で差し戻し(R)が示されています。

遺産名(日本語)国・地域区分申請基準推奨
ガランバ国立公園(再ノミネート)コンゴ民主共和国自然(ix)(x)OK
西部リムフィヨルドの骨魚化石デンマーク自然(viii)I
アカバ海洋保護区ヨルダン自然(ix)(x)I
ゲットボル(干潟)フェーズII韓国自然(境界拡大)(x)OK
バシキール・シフハンロシア自然(viii)R
アカバ湾のサンゴ礁サウジアラビア自然(vii)(viii)(ix)(x)R
ワディ・ウラヤUAE自然(ix)(x)D
オケフェノキー国立野生生物保護区米国自然(ix)(x)I
タナ湖の島の修道院と湿地エチオピア複合(iii)(v)(vi)(x)withdrawn
オリンポス山周辺地域ギリシャ複合(vi)(viii)(ix)(x)R(文化・自然)
アマゾニア・シアター群ブラジル文化(ii)(iv)I
景徳鎮手工磁器産業遺跡中国文化(ii)(iii)(iv)(vi)I
歴史スルタン国のメディナコモロ文化(ii)(iii)(iv)I
アールト・ワークスフィンランド文化(ii)I
ノルマンディーD-Day上陸海岸フランス文化(iv)(vi)I
カルカソンヌ総督府要塞群フランス文化(ii)(iv)I
ベルリン近代住宅地(拡大)ドイツ文化(境界拡大)(ii)(iv)OK
サールナート仏教遺跡インド文化(ii)(iii)(iv)(vi)I
アラムート城と関連要塞イラン文化(ii)(iii)(v)(vi)I
イタリア中部の劇場群イタリア文化(iii)(iv)I
飛鳥・藤原の古都日本文化(ii)(iii)I
マンギスタウの岩窟モスクカザフスタン文化(ii)(iii)(vi)I
シルクロード・フェルガナ=シルダリア回廊4か国文化(ii)(iii)(iv)(v)(vi)D
パツクアロ(人道的記憶と文化の交差点)メキシコ文化(ii)(iv)(vi)withdrawn
フン族貴族の墓地群モンゴル文化(ii)(iii)(iv)I
グディニャ・モダニズム都市中心部ポーランド文化(差し戻し再審議)(ii)(iv)R
ライアの要塞群ポルトガル文化(ii)(iv)(vi)D
ロサ(プランテーション)サントメ・プリンシペ文化(iv)(v)R
リベイラ・サクラの水景スペイン文化(v)N
ワット・プラ・マハータートタイ文化(ii)(vi)I
シディ・ブ・サイドの村チュニジア文化(ii)(iv)(vi)I
ゼルゼヴァン城とミトラ祭殿トルコ文化(iii)(iv)(vi)N
タシケントモダニズム建築ウズベキスタン文化(ii)(iv)I

公式の英語一覧は UNESCO: Nominations 2026 でも確認できます。

日本の候補 — 飛鳥・藤原の古都(Ancient Capitals of Asuka and Fujiwara)

高松塚古墳
奈良県高市郡明日香村の高松塚古墳

2026年の世界遺産 新規登録候補のなかで、国内の関心が最も高いのが奈良県の飛鳥・藤原の古都(国内では「飛鳥・藤原の宮都」とも呼ばれます)です。ユネスコ諮問機関であるICOMOSは登録を推奨(I)しており、文化庁も2026年6月に勧告を公表しています。ただし、最終的な登録の可否は7月の委員会で決まります。

候補地は奈良盆地南部の橿原市・桜井市・明日香村にまたがり、19の構成資産からなるシリアル遺産です。6世紀末(588年頃)〜8世紀初頭(710年頃)の飛鳥時代に、中国の隋・唐や朝鮮半島との交流を通じて律令制を取り入れた中央集権国家が形成された過程を、宮殿・官衙跡、仏教寺院、古墳などが示します。

代表的な構成資産には、日本最古の仏教寺院跡である飛鳥寺跡(005)、飛鳥宮跡(001)・藤原宮跡(013)、石舞台古墳(010)やキトラ古墳(018)・高松塚古墳(019)などがあります。多くの遺構は埋蔵・再埋葬されて保存されており、一部では展示施設や復元模型を通じて当時の都城のスケールを伝えています。

ICOMOSの評価(WHC/26/48.COM/INF.8B1)では、律令制に基づく中央集権的な都城の形成過程を示す遺跡群として位置づけられ、登録基準(ii)(iii)での登録を推奨しています。のちの古都京都の文化財の都城づくりにも影響を与えた点が強調されています。

登録が実現すれば、2024年登録の「佐渡島の金山」以来、世界文化遺産として22件目(自然遺産5件と合わせた国内の世界遺産総数は27件目)となる見込みです(文化庁公表・報道ベース。最終決定前の見通し)。19の構成資産の詳細、見どころ、アクセスは飛鳥・藤原の古都の個別解説記事でまとめています。日本の他の世界遺産については、古都奈良の文化財法隆寺地域の仏教建造物群厳島神社白川郷・五箇山姫路城広島平和記念碑などの解説記事もあわせてご覧ください。

登録が見込まれる候補(諮問機関が I または OK を推奨)

以下では、諮問機関が登録または境界変更の承認を推奨した候補について、ICOMOS・IUCN評価の要点をまとめます。いずれも候補であり、委員会での最終決定は7月の審議後です。

文化遺産

アマゾニア・シアター群(ブラジル)

アマゾン地域の開拓都市に19〜20世紀に建設された劇場・オペラハウスなどの公共文化施設のネットワークが候補です。ラバゴスやマナウスなど、熱帯雨林の資源開発と都市化が進んだ港町・内陸都市に、欧州様式の演劇建築が立地した歴史を示します。

ICOMOSは、植民地時代から20世紀にかけてアマゾンにおける文化・社会の交流を物語る遺産として、登録基準(ii)(iv)での登録を推奨(I)しています。建築の保存状態や都市文脈の維持が今後の課題として指摘されています。

景徳鎮手工磁器産業遺跡(中国)

江西省景徳鎮は、10世紀以降、特に明〜清期に世界の磁器生産をリードした都市として知られます。候補地には窯址、原料の採掘地、加工施設、運河・街道など、手工磁器の生産工程全体を支えた遺構が含まれます。

ICOMOSは、陶磁器技術の発展と世界的な流通を示す産業遺産として、登録基準(ii)(iii)(iv)(vi)での登録を推奨(I)しています。生産遺構と町並みが一体となった景観の保全が評価のポイントです。

歴史スルタン国のメディナ(コモロ)

コモロ連合にとって初の世界遺産候補です。インド洋の交易路に位置するモヘリ島・グランドコモロ島・アンジュアン島などに残る歴史的メディナ(旧市街)が対象で、スルタン制時代の都市構造やスワヒリ・アラブ文化の痕跡を伝えます。

ICOMOSは、インド洋世界における文化の交流と都市の伝統を示す遺産として、登録基準(ii)(iii)(iv)での登録を推奨(I)しています。

アールト・ワークス(フィンランド)

建築家アルヴァ・アールトが手がけた、工場・事務所・実験住宅などの建築群がシリアル遺産として申請されています。20世紀モダニズム建築のなかでも、北欧の気候・材料・生活文化に根ざした人間的スケールの設計が特徴です。

ICOMOSは、近代建築の国際的な流れのなかでアールト独自の美学を示す遺産として、登録基準(ii)での登録を推奨(I)しています。

ノルマンディーD-Day上陸海岸(フランス)

ノルマンディー米軍英霊墓地
ノルマンディー米軍英霊墓地

1944年6月6日の連合軍ノルマンディー上陸作戦(D-Day)に関連する海岸線、要塞跡、記念施設などが候補です。オマハ・ユタ・ゴールドなどのビーチヘッドと、ドイツ軍の大西洋の壁の遺構が、第二次世界大戦の転換点を物語ります。

ICOMOSは、20世紀の軍事史と平和の記憶を伝える遺産として、登録基準(iv)(vi)での登録を推奨(I)しています。フランスの世界遺産については、パリのセーヌ河岸モン・サン=ミッシェルなどの記事も参考になります。

カルカソンヌ総督府要塞群(フランス)

13〜14世紀に南フランスの領土支配を担ったカルカソンヌ総督府(sénéchaussée)の要塞ネットワークが候補です。断崖や河川を利用した防衛線、塔楼・城壁の遺構が、中世の軍事建築と領土統治の仕組みを示します。

ICOMOSは、登録基準(ii)(iv)での登録を推奨(I)しています。周辺の開発や景観管理が保全上の論点として挙げられています。

サールナート仏教遺跡(インド)

ウッタル・プラデーシュ州、バラナシ近郊のサールナート(Sarnath)は、釈迦が初めて説法したとされる仏教の聖地です。阿育王柱や仏塔・僧院跡などが残り、仏教がインドからアジアへ広がる起点として世界的に重要視されています。

ICOMOSは、登録基準(ii)(iii)(iv)(vi)での登録を推奨(I)しています。遺構の保存と参詣・観光のバランスが管理課題として指摘されています。

アラムート城と関連要塞(イラン)

イラン北部、アラムート地方に残る城塞・要塞群が候補です。11〜13世紀のイスマーイール派拠点として知られるアラムート城を中心に、険しい山地に築かれた防御遺構が、地域の政治・軍事史を物語ります。

ICOMOSは、登録基準(ii)(iii)(v)(vi)での登録を推奨(I)しています。

イタリア中部の劇場群(イタリア)

18〜19世紀にイタリア中部の都市で発展したコンドミニオ劇場(小規模な市民向け劇場)のネットワークが候補です。貴族の私的サロンから市民文化へと移行するなかで、各地の都市に建設された劇場が、社会と芸術の関係を示します。

ICOMOSは、登録基準(iii)(iv)での登録を推奨(I)しています。現在も上演が続く施設が多く、生きた文化遺産としての管理が特徴です。

マンギスタウの岩窟モスク(カザフスタン)

カスピ海東岸のマンギスタウ州に広がる、岩窟寺院・聖地・墓群の候補です。遊牧文化のなかで発展したイスラム信仰の聖地が、自然の洞窟や岩壁と結びついた形で残されています。

ICOMOSは、登録基準(ii)(iii)(vi)での登録を推奨(I)しています。聖地としての利用と観光・保全の両立が論点です。

フン族貴族の墓地群(モンゴル)

モンゴル高原に残る匈奴(フン)貴族の巨大墳墓群が候補です。紀元前後のユーラシア草原における初期国家形成と、北方遊牧民族の葬制・階層社会を示す考古遺産として注目されています。

ICOMOSは、登録基準(ii)(iii)(iv)での登録を推奨(I)しています。広大な草原に点在する墳墓の保護と盗掘防止が課題として挙げられています。

ワット・プラ・マハータート(タイ)

タイ南部ナコーンシータンマラートの仏教寺院で、スリーヴィジャヤ文化圏における仏教伝播の重要な聖地です。高い仏塔(チェーディ)を中心とした寺院構成が、東南アジアの宗教建築史における位置づけを示します。

ICOMOSは、登録基準(ii)(vi)での登録を推奨(I)しています。

シディ・ブ・サイドの村(チュニジア)

チュニス市近郊、地中海に面したシディ・ブ・サイドの村が候補です。白壁と青い扉・欄干で知られる景観は、アラブ・アンドアルシアの建築伝統と、詩人・思想家にインスピレーションを与えてきた「精神的な場」として知られています。

ICOMOSは、登録基準(ii)(iv)(vi)での登録を推奨(I)しています。観光地としての人気と伝統的景観の維持が保全の焦点です。

タシケントモダニズム建築(ウズベキスタン)

ウズベキスタン首都タシケントの、ソビエト期モダニズム建築群が候補です。1966年の大地震後の復興計画のなかで建設された住宅・公共建築・モニュメントなどが、中央アジアにおける近代化と地域文化の融合を示します。

ICOMOSは、登録基準(ii)(iv)での登録を推奨(I)しています。居住・利用が続く建築の保全と更新が管理の課題として指摘されています。

自然遺産

西部リムフィヨルドの骨魚化石(デンマーク)

デンマーク・リムフィヨルド地方の初期始新世の地層に含まれる骨魚化石が候補です。温暖化と関連する海洋環境の変化のなかで、魚類がどのように適応・進化したかを示す古生物学の証拠として、IUCNは登録基準(viii)での登録を推奨(I)しています。

化石層の科学的価値と、採掘・公開のあり方が評価の中心です。

アカバ海洋保護区(ヨルダン)

紅海に面するアカバ湾の海洋保護区です。サンゴ礁、海草藻場、多様な魚類・無脊椎動物が生息し、干潮帯から深場までの連続した海洋生態系が保全されています。

IUCNは、登録基準(ix)(x)での登録を推奨(I)しています。沿岸開発や観光・潜水の圧力に対する管理が論点として挙げられています。

オケフェノキー国立野生生物保護区(アメリカ)

オケフェノキー国立野生生物保護区

ジョージア州・フロリダ州にまたがるオケフェノキーの湿地・泥炭地が候補です。黒い川(ブラックウォーター)が流れる広大なスワンプは、アリゲーター、鳥類、希少な植物などを支える生態系のホットスポットです。

IUCNは、登録基準(ix)(x)での登録を推奨(I)しています。火災リスクや水位変動への対応が長期的な保全課題として指摘されています。

境界変更・再ノミネート

ゲットボル(干潟)フェーズII(韓国)

2021年に登録された「韓国の干潟(ゲットボル)」の境界拡大候補です。黄海・西海沿岸の干潟は、渡り鳥の重要な中継地であり、フェーズIIでは既存登録範囲に加え、保全上重要な干潟域を組み込む申請となっています。

IUCNは、登録基準(x)に基づく拡大を承認推奨(OK)しています。

ガランバ国立公園(コンゴ民主共和国)

1980年に世界遺産に登録されたガランバ国立公園を、異なる自然基準で再ノミネートする申請です。森林とサバナが交わる景観は、キバノジラフやゾウ、オカピなどの生息地として知られ、生態系過程(ix)と生物多様性(x)の観点から再評価が求められています。

IUCNは、危機遺産リスト(Danger List)上の遺産として、再ノミネートの承認を推奨(OK)しています。武装紛争や密猟への対応が継続的な課題です。

ベルリン近代住宅地(ドイツ・境界拡大)

2008年登録の「ベルリン近代住宅地」に、ツェーレンドルフの森林集落(Waldsiedlung Zehlendorf)を追加する境界拡大候補です。1920〜30年代の社会住宅(シェーファー計画)の実験的な集落で、既存の6つの住宅地遺産とともに、近代都市計画の多様性を補完します。

ICOMOSは、登録基準(ii)(iv)に基づく拡大を承認推奨(OK)しています。

審議が難しい・見送りの候補

推奨 D(延期)・R(差し戻し)・N(非推奨)

ワディ・ウラヤ(UAE)— 推奨 D

オマーンとの国境に近い山岳湿地が候補です。固有種を含む淡水生態系の価値が指摘される一方、IUCNは保護体制・管理計画・脅威への対応が不十分として、審議延期(D)を推奨しています。

シルクロード・フェルガナ=シルダリア回廊(4か国)— 推奨 D

カザフスタン・キルギス・タジキスタン・ウズベキスタンが共同申請するシルクロードの広域シリアル遺産です。フェルガナ盆地からシルダリア川流域にかけての遺跡・景観が対象ですが、ICOMOSは境界設定や比較分析の再検討が必要として延期(D)を推奨しています。

ライアの要塞群(ポルトガル)— 推奨 D

ポルトガルとスペインの国境沿いに築かれた要塞ネットワークが候補です。近世の国境防衛を示す遺構群ですが、ICOMOSは申請の概念的枠組みと遺産の定義の見直しが必要として延期(D)を推奨しています。

バシキール・シフハン(ロシア)— 推奨 R

ウラル地方の石灰岩の孤立丘(シフハン)が地質遺産として申請されています。古生代の海洋生物化石を含む地層が、古気候の復元に資する価値を持つとされますが、IUCNは追加調査と申請内容の修正が必要として差し戻し(R)を推奨しています。

アカバ湾のサンゴ礁(サウジアラビア)— 推奨 R

紅海・アカバ湾のサンゴ礁が候補です。ヨルダン側のアカバ海洋保護区と海域を共有する生態系ですが、IUCNは保全状況と境界の妥当性について再検討が必要として差し戻し(R)を推奨しています。

オリンポス山周辺地域(ギリシャ)— 推奨 R(文化・自然)

ギリシャ最高峰オリンポス山とその周辺を対象とする複合遺産候補です。神話と自然信仰、生態系の両面からの価値が申請されていますが、ICOMOS・IUCNの双方から差し戻し(R)が示され、文化・自然それぞれの価値の整理と境界の見直しが課題とされています。

ロサ(プランテーション)(サントメ・プリンシペ)— 推奨 R

サントメ・プリンシペに残るコロニアル期のプランテーション(ロサ)遺産群が候補です。カカオ・コーヒー栽培と強制労働の歴史を伝える遺構ですが、ICOMOSは構成・管理計画の補強が必要として差し戻し(R)を推奨しています。

グディニャ・モダニズム都市中心部(ポーランド)— 推奨 R

ポーランド北部の港町グディニャの、20世紀初期のモダニズム都市計画が候補です。前回の委員会から差し戻し(refer)後の再審議となっており、ICOMOS(8B.Add)は追加の構成資産の組み入れと境界の再設定を求め、再度差し戻しを推奨しています。

リベイラ・サクラの水景(スペイン)— 推奨 N

ガリシア地方のリベイラ・サクラ沿いの段々畑と河川景観が候補です。ブドウ栽培と修道院文化の景観として申請されていますが、ICOMOSは現時点での登録非推奨(N)としています。

ゼルゼヴァン城とミトラ祭殿(トルコ)— 推奨 N

ローマ時代のゼルゼヴァン城と、地下に残るミトラ教の祭殿が候補です。国境に近い軍事遺構と宗教遺跡の複合体ですが、ICOMOSは登録非推奨(N)としています。

申請国による撤回

タナ湖の島の修道院と湿地(エチオピア)

タナ湖の島々に残る修道院と、湖周辺の湿地生態系を一体とした複合遺産候補でした。文書作成前にエチオピアが申請を撤回しており、委員会での審議は行われません(8B第3項)。

パツクアロ(人道的記憶と文化の交差点)(メキシコ)

ミチョアカン州パツクアロ湖岸の都市と、先住民文化・植民地時代の記憶を伝える遺産群が候補でしたが、メキシコが審議前に撤回しています(8B第3項)。

今回の委員会では審議されない候補

チャド湖文化景観(カメルーン・チャド・ニジェール・ナイジェリア)

チャド湖周辺の文化景観が、4か国による共同申請候補として長年リストに残っています。しかし安保上の理由により諮問機関による現地調査・評価が実施できず、第48回委員会では審議されません。長期申請のフェーズアウトが検討される段階にあります。

ヒシャーム宮/ヒルベット・アル=マフジャル(パレスチナ)

ウマイヤ朝時代のヒシャーム宮遺跡と、関連するヒルベット・アル=マフジャルが候補です。西岸の安保状況により評価が先送りされており、状況が改善すれば第49回委員会(2027年)での審議が見込まれています。

緊急審議予定(8B本文・33件とは別枠)

委員会資料では、通常の33件とは別に、次の2件が緊急ベースの審議対象として記載されています

ボマ=バディンギロ移動性景観(南スーダン)

東アフリカの季節的な移動を伴う野生動物の景観が候補です。2026年2月に受領された申請で、自然基準(vii)(ix)(x)が申請されています(ID: 1808)。

セバスティア(パレスチナ)

西岸に位置するセバスティアの考古遺跡が候補です。2026年4月に受領された申請で、文化基準(ii)(iii)(vi)が申請されています(ID: 1809)。

詳細は UNESCO 候補一覧 を参照してください。

まとめ

2026年の世界遺産 新規登録は、7月19〜29日の釜山・第48回世界遺産委員会で33件が審議されます(緊急審議2件は別枠)。諮問機関は新規登録18件境界変更・再ノミネート3件を推奨しており、日本からは飛鳥・藤原の古都が注目を集めています。

本記事は候補版です。委員会閉会後、登録が確定した時点で内容を更新し、登録件数・落選候補の整理を行います。前年の確定結果は2025年新規登録まとめ2024年新規登録まとめをご覧ください。

参照(執筆時点): UNESCO 48th sessionNominations 2026、WHC/26/48.COM/8B、ICOMOS WHC/26/48.COM/INF.8B1、IUCN WHC/26/48.COM/INF.8B2(2026年6月20日確認)

投稿者 伊藤

慶應義塾大学文学部卒業。在学中は西洋史学を専攻し、20世紀におけるアメリカの人種差別問題を題材に卒業論文を執筆。2021年に世界遺産検定1級を取得し、2024年には美術検定2級も取得。スタートアップ企業でCTOを務める傍ら、世界遺産クエストを通じて、世界遺産に関する発信活動を行う。

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