高松塚古墳

奈良県南部の飛鳥・藤原の古都(国内では飛鳥・藤原の宮都とも呼ばれます)は、2026年7月に開催される第48回世界遺産委員会の審議候補です。ユネスコ諮問機関ICOMOSは登録を推奨(I)していますが、最終的な登録の可否はまだ決まっていません

本記事では、飛鳥・藤原の古都 世界遺産候補の概要、登録が期待される理由、飛鳥時代の歴史、旅行前に押さえたい見どころとアクセスのヒントをまとめます。2026年の候補33件全体は、2026年世界遺産 新規登録候補まとめもあわせてご覧ください。

飛鳥・藤原の古都(飛鳥・藤原の宮都)とは

飛鳥・藤原の古都(英語名:Ancient Capitals of Asuka and Fujiwara)は、奈良盆地南部の橿原市・桜井市・明日香村に広がる文化遺産の候補地です。6世紀末(588年頃)から8世紀初頭(710年頃)まで、日本の政治・文化の中心地として栄えた飛鳥京藤原京の遺構を、19の構成資産としてまとめたシリアル遺産(複数の関連遺産を一つの世界遺産として申請する形式)です。

宮殿・官衙の跡、仏教寺院の遺構、古墳などが含まれ、中国の隋・唐や朝鮮半島との交流を通じて律令制(天皇を頂点とする中央集権的な国家制度)を取り入れた過程を示す遺跡群として位置づけられています。

19の構成資産の考え方

19件すべてを一度に回る必要はありません。旅行前の予備知識として、次のような資産を代表例として覚えておくと、現地での理解が深まります。

No.名称ポイント
001飛鳥宮跡飛鳥時代の宮殿の中心
005飛鳥寺跡日本最古の仏教寺院跡
013藤原宮跡690年頃に建設された藤原京の正殿跡
016藤原京大極殿跡藤原京の正殿を復元展示
018キトラ古墳壁画で知られる古墳
019高松塚古墳壁画古墳の代表

そのほか、石舞台古墳、斑鳩宮跡、四天王寺北廂房跡などが含まれます。公式の構成資産一覧はユネスコ候補ページで確認できます。

世界遺産への登録が期待される理由(候補としての価値)

ユネスコ諮問機関ICOMOSの評価(WHC/26/48.COM/INF.8B1)では、次の登録基準での登録が推奨されています。

  • 基準(ii):中国の都城計画の影響を受けつつ、日本独自の都城・宮殿・寺院・古墳の形態が発展した過程を示すこと。
  • 基準(iii):律令制に基づく中央集権国家の成立と、その文化的伝統を物語る独自の証拠を提供すること。

6世紀末から7世紀にかけて、飛鳥を中心に仏教文化と大王(後の天皇)を頂点とする政治体制が整えられ、7世紀末から8世紀初頭には藤原京が計画的な都城として建設されました。この一連の過程は、のちの平城京(古都奈良の文化財)や平安京(古都京都の文化財)へと続く日本の首都史の起点と評価されています。

重要:ICOMOSは登録を推奨(I)していますが、最終決定は2026年7月19〜29日に韓国・釜山で開催される第48回世界遺産委員会で行われます。委員会は諮問機関の意見と異なる判断を下すこともあります。

歴史・背景(飛鳥時代と藤原京)

飛鳥時代は、6世紀後半から710年(平城京遷都)までのおよそ130年間を指す時代です。587年頃の丁未の乱以降、大王(天皇)を中心とする政治が強まり、593年には聖徳太子が摂政として政治に携わり、冠位十二階の制定や十七条の憲法(憲法十七条)などが知られています。

飛鳥京では仏教が国家の守護として受け入れられ、飛鳥寺(法興寺)が日本最古の本格的な仏教寺院として建てられました。仏教建築の流れを世界遺産として知るなら、法隆寺地域の仏教建造物群の記事も参考になります。

694年には藤原京が遷都され、690年頃から約16年間、日本の首都として機能しました。710年に平城京(奈良)へ遷都すると、藤原京は廃都となりましたが、大極殿跡など当時の都市計画をうかがえる遺構が残っています。

主な構成資産と見どころ

飛鳥寺跡

飛鳥寺跡は、596年(または593年)頃に建てられたとされる日本最古の仏教寺院の跡です。蘇我馬子が建立した法興寺(飛鳥寺)に由来し、現在は塔の礎石跡などが公開されています。明日香村の中心部にあり、飛鳥の歴史を学ぶ出発点になります。

飛鳥宮跡・藤原宮跡

飛鳥宮跡は飛鳥時代の宮殿があった場所で、大極殿や朝堂院の遺構が調査・保存されています。藤原宮跡は藤原京の正殿・内裏があった広大な遺跡で、大極殿や朝堂院を復元・展示した施設があり、当時の都城のスケールを体感できます。橿原市に位置し、近鉄橿原神宮前駅からアクセスしやすいスポットです。

キトラ古墳・高松塚古墳

キトラ古墳(桜井市)は、2004年の発掘で鮮やかな壁画が見つかり、国内外で注目を集めました。天の川や朱雀などの図像が描かれ、古墳時代の美術史における重要な遺跡です。壁画の公開は時期・予約制など条件があるため、訪問前に公式情報を確認してください。

高松塚古墳(明日香村)は、1972年に壁画が発見された古墳で、飛鳥の人物群像などが知られています。キトラ古墳とあわせて、飛鳥時代の絵画文化を伝える見どころです。大和の古墳文化をさらに知りたい方は、堺市の百舌鳥・古市古墳群(2019年登録の世界遺産)もあわせて学ぶと理解が深まります。

その他の代表資産

  • 石舞台古墳:巨大な花崗岩の石室で知られる古墳。明日香村のシンボル的な存在です。
  • 斑鳩宮跡:中大兄皇子(後の天武天皇)と大海人皇子(後の天智天皇)が住んだとされる宮の跡。
  • 四天王寺北廂房跡:大阪の四天王寺に関連する飛鳥時代の寺院遺構。

多くの遺構は埋蔵・再埋葬されて保存されており、一部は展示館や模型で当時の様子を伝えています。

アクセス・巡礼のヒント

飛鳥・藤原の遺跡は明日香村・桜井市・橿原市に分散しています。車またはレンタサイクルでの周遊が一般的で、近鉄大阪線・吉野線の各駅(橿原神宮前、飛鳥、吉野口など)を起点にしたモデルコースが組みやすいエリアです。

  • 藤原宮跡・藤原京大極殿:近鉄橿原線「橿原神宮前」駅から徒歩またはバス
  • 明日香村の遺跡群(飛鳥寺跡、石舞台古墳、高松塚古墳など):近鉄吉野線「飛鳥」駅周辺
  • キトラ古墳:近鉄大阪線「桜井」駅からバスなど

拝観料・公開日・予約の要否は遺跡ごとに異なります。奈良県や各市町村の観光案内、および文化庁 世界遺産の情報で最新を確認してから訪問してください。

奈良市内の世界遺産とあわせて回る場合は、古都奈良の文化財の記事も参考にしてください。

まとめ

飛鳥・藤原の古都は、2026年世界遺産委員会の審議候補として、律令制国家の成立と都城文化の萌芽を示す19の遺跡からなるシリアル遺産です。ICOMOSは登録を推奨していますが、登録は未確定です。7月の委員会結果を踏まえ、本記事は確定版へリライトする予定です。

飛鳥寺跡、藤原宮跡、キトラ古墳・高松塚古墳を中心に、明日香・橿原・桜井を巡ると、日本の首都史の原点を体感できます。候補33件の全体像は2026年世界遺産 新規登録候補まとめで確認できます。国内の他の世界遺産については、姫路城厳島神社の記事もあわせてご覧ください。

投稿者 伊藤

慶應義塾大学文学部卒業。在学中は西洋史学を専攻し、20世紀におけるアメリカの人種差別問題を題材に卒業論文を執筆。2021年に世界遺産検定1級を取得し、2024年には美術検定2級も取得。スタートアップ企業でCTOを務める傍ら、世界遺産クエストを通じて、世界遺産に関する発信活動を行う。

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