レンソイス・マラニャンセス国立公園

レンソイス・マラニャンセス国立公園(Lençóis Maranhenses National Park)が2024年に世界遺産に登録されたことを受け、その概要と世界遺産としての価値を知りたい方に向けた記事です。広大な白い砂丘と美しいラグーンが織りなす独特の景観や、その地質学的特徴、保護と管理の取り組みについて詳しく解説します。

レンソイス・マラニャンセス国立公園とは

位置と規模

レンソイス・マラニャンセス国立公園(Lençóis Maranhenses National Park)は、ブラジルの北東部、マラニャン州の東海岸に位置しています。この広大な国立公園の面積は156,562ヘクタールに及び、その中には約90,000ヘクタールの広大な白い砂丘地帯と一時的および永続的なラグーンが含まれています。公園はマラニャン州の海岸線に沿って80キロメートルにわたり広がり、その砂丘地帯は内陸に20キロメートル以上も続いています。

地理的特徴

レンソイス・マラニャンセス国立公園は、独特の地理的特徴を持つ地域です。この公園の主な特徴は、海岸線に沿って形成された広大な白い砂丘地帯です。砂丘は海洋堆積物から形成され、風の作用によって形作られています。砂丘は大小さまざまな高さのバルカン砂丘として現れ、海岸近くでは50センチから1メートル、内陸に進むと最大で30メートルの高さに達します。この砂丘地帯は、砂丘と砂丘の間に形成される一時的および永続的なラグーンが点在しており、雨季には水で満たされて美しい景観を作り出します。

気候と季節の変動

レンソイス・マラニャンセス国立公園の気候は熱帯半湿潤で、年の前半には雨季があります。雨季には降雨量が多く、砂丘間にラグーンが形成されます。これらのラグーンは雨水によってのみ満たされ、季節ごとにその形状や位置が変わります。乾季になるとラグーンは乾燥し、砂丘は再び風によって移動し始めます。この季節ごとの変動は、砂丘地帯とラグーンの景観に絶え間ない変化をもたらし、訪れる度に異なる風景を楽しむことができます。

主な自然景観

レンソイス・マラニャンセス国立公園の主な自然景観は、その広大な砂丘と美しいラグーンです。白い砂丘が連なる光景は、まるで砂の海のようであり、雨季には青や緑のラグーンが点在し、壮大なコントラストを描き出します。これらのラグーンは、一時的なものと永続的なものがあり、それぞれが独自の形状と色合いを持っています。また、公園内にはマングローブ、沿岸広葉樹林、熱帯河川など、多様な生態系が存在し、豊かな生物多様性を支えています。訪れる人々は、これらの自然景観を通じて、ブラジルの自然の美しさとその驚異を堪能することができます。

レンソイス・マラニャンセス国立公園の歴史

設立の背景

レンソイス・マラニャンセス国立公園は、ブラジル政府によって1981年に公式に設立されました。その設立の背景には、この地域の独特な地形と自然環境を保護し、持続可能な形で利用するための強い意志がありました。特に、白い砂丘と美しいラグーンの景観は、観光資源としてのポテンシャルが高く、自然保護と経済発展のバランスを図る必要がありました。また、この地域には多様な生態系と豊かな生物多様性が存在し、それらを保護することが重要とされました。

法的保護の概要

レンソイス・マラニャンセス国立公園は、1981年の法令に基づいて国立公園として指定され、ブラジルの国家保護地域システム(SNUC)に属しています。SNUCの下で、この公園は自然資源の間接的な利用のみを許可する「完全保護区」として管理されています。これには、観光や教育活動が含まれますが、開発や資源の採取は厳しく制限されています。さらに、原生自然保護法は、河岸、湧水、丘陵の頂上などの環境的に敏感な地域の保護を規定しており、公園内およびその周辺の保護を強化しています。これにより、公園の自然景観と生態系が守られています。

地域コミュニティとの関係

レンソイス・マラニャンセス国立公園内には、設立以前から居住している伝統的なコミュニティが存在しています。これらのコミュニティは、地元の農業、漁業、牧畜を通じて生計を立てており、観光業の発展に伴い、ホームステイやレストラン経営などの新たな収入源も得ています。ブラジル政府は、これらのコミュニティの生活と文化を尊重し、ICMBioとコミュニティの間で「合意書」が締結されています。この合意書は、伝統的な生活様式と生態系の保護を両立させるための枠組みを提供しています。コミュニティのメンバーは、公園の管理において重要な役割を果たしており、公園評議会を通じて意思決定に参加しています。

近年の発展と管理計画の変更

レンソイス・マラニャンセス国立公園は、設立以来、その管理計画を継続的に見直し、更新してきました。2003年に初めての管理計画が策定され、2022年には最新の更新が行われました。この更新には、公園の保護と利用のバランスを図るための新たな戦略とゾーニングが含まれています。例えば、「プリミティブゾーン」や「広範囲利用ゾーン」などのゾーン分けが行われ、それぞれのゾーンでの活動が細かく規定されています。

また、持続可能な観光の推進と生態系の保護を両立させるための公共利用計画も策定されています。この計画には、公式ルートの標識の改善や、違法な活動の取り締まりを強化するための追加スタッフの採用などが含まれています。さらに、ICMBioは、地域コミュニティとの協力を強化し、持続可能な開発を支援するための新たなガバナンスメカニズムを導入しています。これにより、レンソイス・マラニャンセス国立公園は、自然保護と地域社会の発展を両立させるモデルケースとして注目されています。

レンソイス・マラニャンセス国立公園が世界遺産に登録された理由

美的価値と自然景観の独自性

レンソイス・マラニャンセス国立公園は、その広大な白い砂丘と一時的および永続的なラグーンが織りなす美しい景観で知られています。砂丘は風の作用によって形作られ、ラグーンは雨季に雨水で満たされ、季節ごとに変化するダイナミックな景観を生み出します。この独自の自然現象は、他の場所では見られない特異な美しさを持っています。

地質学的および地形学的特徴

公園の砂丘は、第四紀の間に形成された海洋堆積物によって構成されており、南米最大の砂丘地帯とされています。砂丘とラグーンの形成プロセスは、地質学的進化の顕著な証拠として評価されています。これらの地質学的および地形学的特徴は、科学的な観点からも非常に重要です。

保護と管理の強化

レンソイス・マラニャンセス国立公園は、1981年に国立公園として指定されて以来、厳格な法的保護の下で管理されています。地域コミュニティとの協力を重視し、彼らの生活様式を尊重しながら、持続可能な観光と環境保護の取り組みを推進しています。これにより、公園の自然資源と生態系は効果的に保護されています。

まとめ

レンソイス・マラニャンセス国立公園は、その美しい砂丘とラグーン、独特の地質学的特徴により2024年に世界遺産に登録されました。この記事では、公園の概要と世界遺産としての価値、保護と管理の取り組みについて詳しく解説しました。これにより、この貴重な自然遺産の重要性を理解していただけるでしょう。

投稿者 伊藤

慶應義塾大学文学部卒業。在学中は西洋史学を専攻し、20世紀におけるアメリカの人種差別問題を題材に卒業論文を執筆。世界遺産検定1級。