ハグマターナ

2024年に世界遺産に登録されたハグマターナ(Hegmataneh)とは。本記事では、ハグマターナの基本情報、歴史、そして世界遺産に登録された理由についてわかりやすく解説します。

ハグマターナとは

場所と位置

イラン・イスラム共和国の北西部に位置するハマダーン市にあり、エクバターナ(Ecbatana)として知られる古代ペルソアの都市の名が、古代ペルシア語ではハグマターナと呼ばれていました。ザグロス山脈のアールヴァンド支脈の麓に広がるこの都市は、古代文明の重要な拠点として知られています。ハマダーン市は、現在でも歴史的な魅力を持ち、多くの観光客や研究者が訪れる場所です。

歴史的背景

ハグマターナは、紀元前7世紀から6世紀にかけて栄えたメディア文明の中心地であり、その後のアケメネス朝、セレウコス朝、パルティア朝、サーサーン朝の統治者たちの夏の首都としても機能しました。この都市は、ほぼ3000年にわたる継続的な人類の居住の歴史を持ち、多くの異なる文明や文化が交差する地点として重要な役割を果たしてきました。

考古学的価値

ハグマターナの遺跡は、メディア文明の貴重な証拠を提供するだけでなく、アケメネス朝、セレウコス朝、パルティア朝、サーサーン朝の各時代の考古学的遺産も含まれています。これらの遺跡は、古代都市の計画や建築技術、文化的・社会的・経済的発展の過程を示す重要な証拠を提供します。ハグマターナの考古学的遺産は、20世紀に多くの建物が除去されたことで広大な領域が明らかにされ、その後の発掘調査によって多くの貴重な遺物が発見されました。これにより、ハグマターナはイランのみならず、世界的にも重要な考古学的サイトとして認識されています。

ハグマターナの歴史

古代メディア文明

ハグマターナは、紀元前7世紀から6世紀にかけて栄えたメディア文明の中心地として知られています。メディア王国はイラン高原に最初の統一国家を築き、ハグマターナはその首都として機能していた可能性があります。この時代、都市は高度な都市計画と建築技術を誇り、その証拠は現在でも遺跡として残されています。メディア文明は高度な金属加工技術を持ち、発見されたブローチや陶器はその優れた工芸技術を示しています。

アケメネス朝、セレウコス朝、パルティア朝、サーサーン朝の時代

メディア王国が崩壊した後、ハグマターナはアケメネス朝の夏の首都として重要な役割を果たしました。この時代、都市はさらなる発展を遂げ、アケメネス朝の王宮や行政施設が建設されました。セレウコス朝、パルティア朝、サーサーン朝の各時代においても、ハグマターナは重要な都市としての地位を維持し続けました。特にパルティア朝の時代には、都市計画や建築の革新が進み、モジュール構造が導入されました。これにより、都市は高度に組織化され、繁栄しました。サーサーン朝の時代には、宗教的な建造物や公共施設が多数建設され、都市の重要性はさらに高まりました。

イスラム時代から現代まで

イスラム時代に入ると、ハグマターナは宗教的および学術的な中心地としての役割を果たしました。アヴィセンナやババ・ターヘルなど、著名な学者や詩人がこの地で活動し、都市は知識と文化の拠点として繁栄しました。サファヴィー朝とカージャール朝の時代には、都市の多くの建物が再建・修復され、その多くが現在でも残っています。20世紀に入ると、ハグマターナは現代的な都市計画と伝統的な都市構造が融合する独自の都市景観を形成しました。放射状の街路網が歴史的中心部に重ねられ、新たな広場や通りが設けられました。これにより、古代から現代に至るまでの都市の進化と文化の融合が一目でわかる都市となっています。

ハグマターナが世界遺産に登録された理由

考古学的証拠の重要性

ハグマターナは、紀元前7世紀から6世紀のメディア文明の貴重な証拠を提供する考古学的遺跡として、極めて重要です。メディア王国の首都としての地位は確定していないものの、当時の高度な都市計画や建築技術の証拠が数多く発見されています。これらの遺跡は、メディア文明の都市構造や文化を理解する上で不可欠です。さらに、アケメネス朝、セレウコス朝、パルティア朝、サーサーン朝の各時代にわたる継続的な人類の居住の証拠も発見されており、これらの文明の発展と変遷を追跡することができます。

文化的・歴史的価値

ハグマターナは、3000年にわたる人類の歴史と文化の交差点として、極めて重要な役割を果たしてきました。古代メディア文明からアケメネス朝、セレウコス朝、パルティア朝、サーサーン朝、そしてイスラム時代に至るまで、さまざまな文化や宗教がこの地で融合し、豊かな歴史的遺産を形成してきました。特に、バザールや宗教建築、公共施設、住宅など、多様な建築遺産が残されており、都市の発展と文化的多様性を象徴しています。これらの遺産は、ハグマターナが地政学的、文化的、貿易の中心地として果たしてきた重要性を証明しています。

保存状態と保護対策

ハグマターナの遺跡は、20世紀に多くの建物が除去されたことで広大な領域が明らかにされ、その後の発掘調査によって多くの貴重な遺物が発見されました。これにより、保存状態は比較的良好であり、発見された遺跡は適切に保護されています。考古学的遺跡の保存に関しては、軽量の保護シェルターの設置や、伝統的な泥と藁の混合物による壁の保護、土で覆うなどの方法が採用されています。また、定期的な監視と保守が行われており、遺跡の保全と保護が確保されています。さらに、イラン政府は国の法律と規制に基づき、ハグマターナの保護と管理を行っており、地域社会の参加も奨励されています。これにより、ハグマターナは未来の世代にその歴史的価値を伝えるための適切な措置が講じられています。

まとめ

ハグマターナは、メディア文明から続く長い歴史と多様な文化を持つ重要な遺跡です。考古学的な証拠や文化的・歴史的価値が認められ、2024年に世界遺産に登録されました。その保存状態も良好であり、適切な保護対策が講じられています。ハグマターナの重要性と魅力を理解し、未来に伝えていく意義を再確認しましょう。

投稿者 伊藤

慶應義塾大学文学部卒業。在学中は西洋史学を専攻し、20世紀におけるアメリカの人種差別問題を題材に卒業論文を執筆。世界遺産検定1級。