ヴィクトリアの滝

ヴィクトリアの滝(ビクトリアの滝)は、アフリカ南部のザンビアとジンバブエの国境を流れるザンベジ川の中流にある滝で、世界三大瀑布の一つとして有名です。

この記事では、ヴィクトリアの滝を最高に楽しむためのベストシーズンや具体的な行き方、観光時の注意点を詳しく紹介しつつ、世界遺産に選ばれた理由についても解説します。

ヴィクトリアの滝とは?

ヴィクトリアの滝は世界三大瀑布の一つ

ヴィクトリアの滝(「ビクトリアの滝」と表記されることもあります)は、ナイアガラの滝(北米)、イグアスの滝(南米)と並んで、世界三大瀑布の一つに数えられています。アフリカ大陸に位置し、ザンビアとジンバブエの国境にまたがるこの滝は、その壮大なスケールで訪れる人々を圧倒します。幅約1.7km、落差約108mに及ぶ巨大なカーテン状の滝は、「モシ・オ・トゥニャ(雷鳴の轟く水)」とも呼ばれ、その名にふさわしい迫力を持っています。

迫力満点の水量と美しい景観

ヴィクトリアの滝の魅力の一つは、その圧倒的な水量です。特に雨季(2月から5月)には、毎分500,000立方メートルもの水が落下し、まさに自然の力を体感することができます。滝から立ち昇る水煙は20キロ先からも見えるほどで、虹が頻繁に現れる光景は訪れる人々にとって忘れられないものとなります。また、乾季(8月から10月)には水量が減少し、滝の形状や岩肌がはっきりと見えるため、異なる美しさを楽しむことができます。

ヴィクトリアの滝の名前の由来と「モシ・オ・トゥニャ」の意味

ヴィクトリアの滝の名称は、19世紀に活躍したイギリスの宣教師・探検家デイヴィッド・リビングストーンによって名付けられました。彼は1855年にこの滝を初めて欧米人として目にし、その圧倒的な自然美と壮大な景観に深い感銘を受けたと言われています。当時、イギリスはヴィクトリア女王の治世下にあり、リビングストーンは女王への敬意を込めて「ヴィクトリア・フォールズ」と命名しました。一方、現地のバントゥー系民族は、滝から立ち上る水しぶきが雷鳴のように轟く様子から「モシ・オ・トゥニャ」(「雷鳴轟く水煙」)と呼んでおり、今日では双方の名称が公式に併記されています。

参考:『ザンビア観光情報』(在ザンビア日本国大使館)

現地で楽しめるアクティビティも魅力

ヴィクトリアの滝周辺では、さまざまなアクティビティを楽しむことができます。人気のあるアクティビティの一つが、滝の上を飛ぶヘリコプター遊覧飛行です。上空から見る滝の全景は圧巻で、写真や映像では味わえない感動を得ることができます。また、滝の近くにあるデビルズプールでは、自然のプールでスイミングを楽しむことができ、まるで滝の端に立っているかのようなスリリングな体験が可能です。さらに、ザンベジ川でのラフティングやカヌー、ジップラインなどもあり、アドベンチャー好きにはたまらないスポットとなっています。

ヴィクトリアの滝のベストシーズン

ヴィクトリアの滝

ヴィクトリアの滝に行くベストシーズンは5月から10月

ヴィクトリアの滝を訪れるベストシーズンは、乾季にあたる5月から10月です。この期間は雨が少なく、気温も比較的穏やかで観光に最適です。特に5月から8月にかけては、日中の気温が20〜25度程度で過ごしやすく、夜間も快適な気候が続きます。乾季の初めは、まだ滝の水量が多く、迫力ある景観を楽しむことができます。9月から10月になると水量は減少しますが、その分滝の形状や岩肌が露わになり、異なる魅力を味わうことができます。

高水量な雨季もまた魅力的

高水量シーズンは、主に2月から5月にかけての雨季です。この時期、ヴィクトリアの滝は最も壮大な姿を見せ、毎分500,000立方メートルもの水が轟音とともに流れ落ちます。滝から立ち上る水しぶきは数キロ先からも確認でき、虹が頻繁に現れる美しい光景が広がります。滝の迫力と自然の力強さを全身で感じることができるため、この時期に訪れる価値は十分にあります。ただし、水しぶきが激しいため、滝の全景を観るのが難しい場合もあるので、防水対策をしっかり行いましょう。

乾季ならではの魅力と注意点

乾季(8月から10月)は、水量が減少し滝の岩肌が露わになります。このため、滝の形状や地形を詳細に観察することができ、異なる視点からヴィクトリアの滝を楽しむことができます。また、この時期はデビルズプールという自然のプールでスイミングが楽しめる時期でもあります。デビルズプールは滝の端に位置し、安全な条件下でスリリングな体験ができます。しかし、乾季は水量が少なくなるため、滝の迫力が減少することに留意が必要です。訪れる際には、気温が高くなることもあるので、熱中症対策や水分補給をしっかり行いましょう。

このように、快適に観光できるベストシーズン5〜10月ですが、他のシーズンにおいても季節ごとにそれぞれの特徴があるのも、ヴィクトリアの滝の魅力の1つでしょう。

ヴィクトリアの滝への行き方

ヴィクトリアの滝

車や送迎サービスを利用して移動するのが一般的

ヴィクトリアの滝周辺には公共交通機関で移動することができないため、主な移動手段としては、タクシー、シャトルバス、レンタカーになります。リヴィングストン空港(ザンビア)やヴィクトリアフォールズ空港(ジンバブエ)から滝までは車で約30分ほどの距離で、多くの宿泊施設やツアー会社が提供する空港送迎サービスも良い選択肢です。

また、滝の周辺を観光する際には、徒歩や自転車のレンタルも利用できます。徒歩で滝の近くを散策することで、自然の迫力をより身近に感じることができますし、自転車を利用すれば、広範囲を効率的に回ることができます。

主要な観光拠点からのアクセス

ヴィクトリアの滝周辺には、ザンビアのリヴィングストン市とジンバブエのヴィクトリアフォールズ市という二つの主要な観光拠点があります。どちらの都市も滝から近く、多くの観光施設や宿泊施設が充実しています。

リヴィングストン市からヴィクトリアの滝へは、車で約10キロメートルの距離です。市内には博物館や歴史的な建物があり、滝と合わせて観光を楽しむことができます。一方、ヴィクトリアフォールズ市から滝へは、徒歩圏内にあり、市内にはカフェやレストラン、アートギャラリーなどが点在しています。観光客向けの情報センターもあり、現地での観光情報を手に入れるのに便利です。

以上が、ヴィクトリアの滝への行き方に関する情報です。日本からのアクセス方法や現地での移動手段を事前に把握し、スムーズな旅行計画を立てることが、素晴らしい滝の旅を楽しむ鍵となります。

ヴィクトリアの滝を観光する際の注意点

健康面での注意事項

ヴィクトリアの滝を訪れる際には、健康面でのいくつかの注意点を事前に確認しておくことが重要です。まず、予防接種に関する情報をチェックしましょう。特に黄熱病の予防接種が必要な場合がありますので、渡航前に医師に相談し、必要な予防接種を受けておくことをお勧めします。また、滞在中はマラリア対策が重要です。虫除けスプレーや蚊帳を利用し、マラリア予防薬を服用することを検討してください。

気候が乾燥している時期でも、日中は日差しが強いため、日焼け対策も忘れずに行いましょう。長時間の屋外活動には、帽子やサングラス、日焼け止めクリームが必需品です。また、水分補給を怠らないようにし、脱水症状を防ぐために十分な飲料水を持参することが大切です。

安全な観光のためのポイント

ヴィクトリアの滝周辺は自然の力が強く、観光中の安全には十分な注意が必要です。特に滝の近くや遊歩道では、滑りやすい場所があります。歩行時には、足元に注意し、滑りにくい靴を着用することをお勧めします。また、遊泳エリアや観光アクティビティを利用する際は、必ずガイドの指示に従い、安全対策を徹底しましょう。

さらに、現地では野生動物との遭遇も考えられます。動物に近づきすぎず、自然の中でのルールを守ることが重要です。また、貴重品の管理にも注意が必要です。観光中は、貴重品を宿泊先のセーフティボックスに預けるか、身につけておくようにしましょう。

持ち物と服装のアドバイス

ヴィクトリアの滝を訪れる際の持ち物と服装についても、事前にしっかりと準備しておくことが大切です。まず、服装は季節や天候に合わせて選びましょう。乾季には軽装で十分ですが、雨季には雨具や防水のジャケットが必要です。また、滝の近くでは水しぶきがかかることが多いため、防水仕様のバッグやカメラケースを用意すると良いでしょう。

足元は、歩きやすく滑りにくい靴を選びましょう。長時間の歩行やハイキングを予定している場合は、トレッキングシューズが適しています。その他にも、サングラスや帽子、日焼け止めクリームなどの日焼け対策グッズを持参することをお勧めします。

持ち物としては、飲料水や軽食、予備のバッテリーやメモリーカードも準備しておくと便利です。さらに、現地での連絡手段として、SIMカードやポータブルWi-Fiを利用することも考慮しましょう。これらの準備を整えておくことで、安心してヴィクトリアの滝観光を楽しむことができます。

ヴィクトリアの滝が世界遺産である理由

ヴィクトリアの滝は「モシ・オ・トゥニャ(ヴィクトリアの滝)」として1989年に世界遺産(自然遺産)として登録されましたが、世界遺産としては以下の2点で評価されています。

登録基準(vii) 莫大な水量と絶景

モシ・オ・トゥニャ(ヴィクトリアの滝)は、世界最大の滝として、各地点(デビルズ滝、メイン滝、レインボー滝、イースタン滝)から流れ落ちる莫大な水量と、その水しぶきによって生まれる虹や霧が、圧倒的な自然美を創出しています。さらに、周辺の急峻な火成岩峡谷や熱帯雨林は、絶滅危惧種の渡り鳥の繁殖地として重要な生態系を形成しており、ザンビアとジンバブエ双方から直接鑑賞できる点が、普遍的価値を際立たせています。

この点で、登録基準(vii) 「ひときわ優れた自然美や美的重要性をもつ、類まれな自然現象や地域」を満たすものとして認められました。

登録基準 (viii) 地質変遷の好例

ビクトリアの滝とその周囲に広がる8つの峡谷は、地質学的時間のスケールで変動する自然のダイナミズムを示す好例とされ、川の捕獲や持続的な浸食作用により、硬い玄武岩が層状に彫刻され、滝の位置が変化する過程が明瞭に記録されています。また、古代の溶岩流や砂岩、玉髄の存在は、300万年前からの人類活動や考古学的証拠と結びつき、地質学的・歴史的価値の高さを裏付けています。

この点から、登録基準 (viii) 「生命の進化の記録や地形形成における重要な地質学的過程、または地形学的・自然地理学的特長を含む、地球の歴史の主要段階を示す顕著な見本」としても評価されています。

参考:『Mosi-oa-Tunya / Victoria Falls』(UNESCO)

まとめ

いかがだったでしょうか。

ベストシーズンはもちろんのこと、季節ごとに様々な表情を見せるあたりも自然ならではの美しさですよね。そしてまた、世界遺産として認められている価値を再認識することで、よりヴィクトリアの滝が魅力的に感じるのは私だけでないはずです。

投稿者 伊藤

慶應義塾大学文学部卒業。在学中は西洋史学を専攻し、20世紀におけるアメリカの人種差別問題を題材に卒業論文を執筆。2021年に世界遺産検定1級を取得し、2024年には美術検定2級も取得。スタートアップ企業でCTOを務める傍ら、世界遺産クエストを通じて、世界遺産に関する発信活動を行う。

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