2025年に新たに世界遺産に登録される候補となるリストがついに明らかになりましたね。
そこで今回の記事では、ユネスコ公式の最新ドキュメント(2024年5月26日公開)をもとに、2025年の第47回世界遺産委員会で新たに登録が検討される全32件の候補地を、どこよりも早く・分かりやすくお届けできればと思います。
第47回世界遺産委員会の概要
2025年に開催予定の第47回世界遺産委員会(World Heritage Committee)は、世界遺産条約に基づき、ユネスコによって運営される最も重要な国際会議の一つです。毎年開催されるこの委員会では、各国から推薦された文化遺産・自然遺産・複合遺産が世界遺産リストへの新規登録の可否を審議されます。
第47回世界遺産委員会は、2025年7月6日から16日までフランスのパリで開催され、世界中から集まった多様な遺産32件が審査対象となっており、歴史的・文化的価値、自然環境、保全体制の観点から厳正な審査が行われます。
この記事では、公式資料に基づき「2025年に世界遺産登録が見込まれる全32件」の遺産を分かりやすく解説します。文化遺産・自然遺産・複合遺産のカテゴリーごとに、各遺産の魅力や特徴を見ていきましょう。
2025年に登録される見込みがある遺産一覧
ここでは文化遺産、自然遺産、複合遺産に分類し、2025年に新規登録が期待される全32件の世界遺産候補について解説します。
2025年に登録見込みの文化遺産
金剛山 – 海からのダイヤモンドマウンテン(朝鮮民主主義人民共和国)
朝鮮半島北部に位置する金剛山(クムガンサン)は、壮大な花崗岩の奇峰と豊かな自然景観が織りなす、東アジアを代表する霊山です。古来より韓国・北朝鮮双方で信仰や芸術の対象とされ、多くの詩文・絵画にその美しさが描かれてきました。特に「海からのダイヤモンドマウンテン」とも称される通り、朝鮮半島東岸から海越しに仰ぐ金剛山は圧巻。山岳景観だけでなく、仏教遺跡や王朝時代の伝統文化と結びつく歴史的価値も高いと評価されています。2025年の世界遺産委員会では、自然美と文化的精神性が融合する独自性、さらに保護体制の充実が審査の焦点となっています。
ムルジュガ文化的景観(オーストラリア)
オーストラリア北西部、ピルバラ地方に位置するムルジュガ(英語名:Murujuga)は、数万年にわたりアボリジニの人々が営んできた文化と信仰の痕跡が色濃く残る岩石地帯です。最大の特徴は、世界最大級のペトログリフ(岩絵)群が点在すること。約100万点とも言われる岩絵は、狩猟採集民の生活や動植物、神話的存在が描かれ、オーストラリア大陸先住文化の継承を示しています。鉱業開発との共存・保存管理が課題ですが、先住民団体と連携した保護体制が高く評価され、2025年の新規登録候補に挙がっています。
カンボジア追悼地:抑圧の中心地から平和と省察の場所へ(カンボジア)
カンボジアの「追悼地」は、1970年代のポル・ポト政権下に発生した大虐殺の歴史と、そこからの和解・再生への歩みを象徴する記念的場所です。強制収容所や殺戮場(キリング・フィールド)といった負の遺産が、平和の尊さや人権擁護への教育の場として再定義されています。悲劇の歴史を正面から見つめ直し、記憶の継承・犠牲者の追悼を目的とした展示やイベントも盛んです。世界遺産登録を通じて、負の歴史遺産の保護と平和構築の重要性が国際的に再評価されることが期待されています。
マンダラ山脈のディ=ギド=ビイ文化的景観(カメルーン)
カメルーン北部、マンダラ山脈に広がるディ=ギド=ビイ文化的景観は、先住民族による伝統的な農業・居住・宗教空間が一体となった稀有な文化的ランドスケープです。石垣や段々畑、聖域が山岳斜面に巧みに築かれ、土地利用の持続可能性・精神文化との調和が高く評価されています。地域共同体の生活文化や口承伝統、精霊信仰といった非物質的遺産も豊かであり、世界的にも他に例のない農村景観として2025年の新規登録が期待されています。
西夏王陵(中国)
中国寧夏回族自治区に広がる西夏王陵は、11世紀から13世紀にかけて栄えた西夏王朝の王族の陵墓群です。壮大な土塁やピラミッド状の墓塔が砂漠地帯に点在し、その規模・保存状態は中国の古代王朝遺跡の中でも屈指。西夏独自の文字や美術、仏教文化など多様な要素が融合し、中国内陸部の民族・文明交流史を物語ります。現在も発掘調査や修復作業が続けられ、考古学的価値が極めて高い点が注目されています。
カルナックおよびモルビアン湾岸の巨石遺跡(フランス)
フランス西部ブルターニュ地方のカルナックやモルビアン湾岸には、紀元前5000年ごろから建造されたと推定される巨大な列石(メンヒル)や環状列石(ドルメン)が数千点残ります。これらの巨石遺構はヨーロッパの新石器時代文化を代表し、先史時代の信仰・儀礼や共同体生活を解明するうえで欠かせない遺産です。観光資源としても高い人気を誇り、保存と活用のバランスが課題となっています。
バイエルン国王ルートヴィヒ2世の宮殿群:ノイシュヴァンシュタイン、リンダーホーフ、シャッヘン、ヘルレンキームゼー – 夢から現実へ(ドイツ)
19世紀末ドイツのバイエルン王ルートヴィヒ2世が建設した4つの宮殿は、ロマン主義と現実主義が交差する独創的な建築群です。ディズニーランドのモデルにもなったノイシュヴァンシュタイン城をはじめ、幻想的な美しさと個性的な設計思想が高く評価されています。王の理想と現実、芸術愛と国家運営という二面性が凝縮された文化的景観として、世界遺産への登録が審査されています。
ミノア宮殿群(ギリシャ)
エーゲ海・クレタ島のミノア宮殿群は、ヨーロッパ最古の高度な都市文明を築いたミノア文明の象徴です。クノッソス、ファイストス、マリアなど複数の宮殿遺跡が発見されており、精緻なフレスコ画や建築構造、祭祀儀礼の痕跡が保存されています。地中海交易の拠点としても発展し、古代ギリシャ文化の源流を物語ります。2025年の世界遺産登録候補の中でも、考古学・歴史学の両面で大きな注目を集めています。
マラーター軍事景観群(インド)
インド西部を中心に広がるマラーター軍事景観群は、17世紀~19世紀のマラーター王国が築いた要塞や防御施設のネットワークです。断崖絶壁の上に建つ城塞や水利施設、見張り台などが戦略的に配置され、地域支配の変遷や軍事技術の進化を伝えます。地元コミュニティによる維持管理・伝統行事も続き、インド近代史を学ぶ上で重要な役割を果たしています。
ホッラマーバード渓谷の先史時代の洞窟群とファラク・オッ・アフラク複合体(イラン)
イラン西部のホッラマーバード渓谷に位置するこの遺産は、先史時代から続く人類居住の痕跡が豊富に残されています。洞窟住居跡や古代集落、ファラク・オッ・アフラク城といった考古・建築遺構が密集し、中東における人類史の連続性と多様性を物語ります。考古学的な発見も多く、今後の研究にも大きな期待が寄せられている遺産です。
サルデーニャ先史時代の芸術と建築 – ドムス・デ・ヤナス(イタリア)
イタリア・サルデーニャ島に分布する「ドムス・デ・ヤナス」は、新石器時代から青銅器時代にかけて造られた岩窟墓の総称です。複雑な迷路状の内部構造や壁画装飾が特徴で、死生観や社会構造を知る手がかりとして注目されています。サルデーニャ独自の先史時代文化の発展と外部交流の痕跡を伝える重要遺産です。
17世紀ポート・ロイヤル考古景観(ジャマイカ)
カリブ海に面したジャマイカのポート・ロイヤルは、17世紀に海賊の拠点として栄えた国際的な貿易港でした。1692年の大地震により都市の大半が水没したため、「カリブ海のアトランティス」とも称されます。水中考古学の成果によって、当時の都市構造や交易ネットワークの実態が解明されつつあり、世界遺産登録が期待されています。
ムランジェ山文化的景観(マラウイ)
マラウイ南部に位置するムランジェ山は、標高3,000m級の雄大な山並みと、その斜面に広がる伝統的な農業景観が特徴です。アフリカの先住民族による持続可能な土地利用や宗教的慣習が現在も色濃く残り、多様な動植物と人間社会の共生が体現されています。自然・文化の両面で価値が認められる、アフリカ大陸有数の文化的景観です。
マレーシア森林研究所森林公園(セランゴール)(マレーシア)
マレーシア・セランゴール州に位置するこの森林公園は、熱帯雨林生態系の保全と持続可能な研究・教育の場として国際的に高い評価を受けています。森林内には貴重な固有種や巨木群、伝統的な森林利用の文化が残り、多様なプログラムやエコツーリズムが展開されています。自然と人間社会の調和したあり方が、2025年の世界遺産委員会でも注目されています。
ウィチョル族の聖地への道 ウイリクタ(メキシコ)
メキシコのウイチョル族(ウイリカ族)は、聖地ウイリクタへの巡礼を中心とする独自の宗教文化を持っています。この巡礼路と関連する聖なる山々・洞窟・儀式場は、先住民族の宇宙観や伝統文化の象徴です。観光開発や資源開発による聖地の保護が課題ですが、世界遺産登録を通じて多様な文化的価値の尊重と保全が期待されています。
ティラウラコット=カピラヴァストゥ 古代シャキヤ王国の考古遺跡(ネパール)
ネパール南部に位置するティラウラコットは、釈迦(ゴータマ・シッダールタ)の生誕地カピラヴァストゥとされる古代都市遺跡です。古代インド・ヒマラヤ文明の交差点として、歴史・宗教・考古学的に高い価値があります。仏教遺産としてだけでなく、多様な文明交流の拠点として再評価が進んでいます。
パナマ植民地時代の地峡ルート(パナマ)
パナマ地峡を横断する植民地時代の道路や関連遺構は、アメリカ大陸の東西交流・交易・植民活動の要所でした。スペイン植民地時代から利用された歴史的な道は、現在も一部が利用されており、異文化交流・世界経済史の重要な遺産として注目されています。
グディニャ 初期モダニズム都市中心部(ポーランド)
ポーランドの港湾都市グディニャは、20世紀初頭に整備されたモダニズム建築群で知られています。幾何学的なデザインや機能性を重視した都市計画が実現され、ヨーロッパの近代都市史における象徴的な存在です。保存状態も良く、モダニズム建築ファンから高い評価を集めています。
アルヴァロ・シザの建築:近代コンテクスチュアリズムの遺産(ポルトガル)
ポルトガルの世界的建築家アルヴァロ・シザが手がけた作品群は、近代コンテクスチュアリズム(文脈主義)建築の金字塔とされています。地域性や歴史を重視しつつ現代的な意匠を融合させたその手法は、世界中の建築家に大きな影響を与えました。住宅、公共施設、文化施設など多岐にわたり、現代建築史の重要な資産です。
盤亀台岩刻画群(韓国)
韓国南部の盤亀台(バングチョン)には、先史時代から続く岩刻画(ペトログリフ)が残ります。動物や人間、抽象的な模様が刻まれており、当時の生活や信仰、芸術表現を解明する手がかりとなっています。考古学・美術史の両面で国際的に高い評価を受けています。
シュルガン・タシ洞窟の岩絵(ロシア連邦)
ロシア南部のシュルガン・タシ洞窟には、旧石器時代の貴重な洞窟壁画が数多く残されています。狩猟や儀礼の様子、動物の描写が巧みに描かれており、中央アジアの先史時代文化の研究に欠かせない資料です。保護体制の強化と学術的研究の発展が期待されています。
古代フッタール(タジキスタン)
タジキスタン西部のフッタール遺跡は、中央アジアを横断するシルクロード沿いの交易都市遺跡です。ゾロアスター教や仏教、イスラム教など多様な宗教文化が交錯し、壮大な都市遺構や埋葬施設が発掘されています。中央アジア古代史の研究に不可欠な存在です。
サルディスとビン・テペのリュディア塚(トルコ)
トルコ西部のサルディスとビン・テペには、古代リュディア王国の王墓(墳丘墓)が広がります。ギリシャ・ローマ以前のアナトリア文化の精華が凝縮されており、黄金文明の象徴としても名高い遺産です。
ファヤ古景観(アラブ首長国連邦)
アラブ首長国連邦北部のファヤ地方には、先史時代からの人類活動の痕跡が広範囲に残っています。洞窟遺跡や石器、集落跡などが発見され、アラビア半島の人類史解明に重要な役割を果たしています。
イェントゥ=ヴィンギエム=コンソン、キエッバック記念碑・景観複合体(ベトナム)
仏教文化と山岳信仰が融合した霊場として知られる本遺産は、ベトナム北部のイェントゥ山系、ヴィンギエム、コンソン、キエッバックの諸遺跡で構成されます。イェントゥ山はベトナム禅宗発祥の地として著名で、長い巡礼路と数多くの仏教寺院が山中に点在しています。特に、トラン朝時代に禅僧チャン・ニャン・トンが修行を行い、仏教と山岳信仰の融合文化を築いたことが評価されています。ヴィンギエムやコンソンには、禅宗の寺院建築や貴重な経典、歴史的石碑が保存され、キエッバックは文学者グエン・チー・タインの記念地としても有名です。
2025年に登録見込みの自然遺産
カベルナス・ド・ペルアス国立公園(ブラジル)
カベルナス・ド・ペルアス国立公園は、ブラジル中西部に広がる壮大な洞窟群と石灰岩台地で知られる自然遺産です。数百に及ぶ洞窟や地下河川、巨大な鍾乳石・石筍など、南米最大級のカルスト地形を形成しています。独自の生態系や多様なコウモリ・洞窟生物の存在、考古学的価値の高い岩絵や先住民遺跡も確認されており、地質・生物・文化の各分野で重要視されています。人類の居住跡や古代の儀式場なども含まれ、学術調査の宝庫です。公園は厳格な自然保護と持続的観光を両立させる管理体制が評価され、世界遺産登録に大きな期待が寄せられています。
モンス・クリント(デンマーク)
モンス・クリントは、デンマーク南東部にそびえる高さ120m超の白亜の断崖絶壁で有名です。バルト海に面して約6km続く断崖は、数千万年前の地質活動で形成されたもので、白亜紀の化石が多数出土します。独特の景観美だけでなく、海岸林や希少な動植物群落も保護されており、ヨーロッパでも屈指の自然観光地として親しまれています。環境教育や持続可能な観光のモデル地域としての側面も注目されています。
ビジャゴス群島海岸・海洋生態系 – オマティ・ミニョ(ギニアビサウ)
ギニアビサウ沖に広がるビジャゴス諸島は、数十の島々と干潟、マングローブ林、海草藻場が織りなす海洋・沿岸生態系の宝庫です。多様な魚類・カメ・海鳥の生息地であり、絶滅危惧種の重要な保護区でもあります。伝統的漁業や島民文化も自然環境と密接に結び付いており、「人と自然の共生」が評価されています。2025年の審査では、従来範囲の拡張を含め、保全管理体制や持続可能な利用の取り組みが注目ポイントです。
ヒン・ナム・ノ国立公園(ラオス人民民主共和国)
ラオスとベトナムの国境地帯に位置するヒン・ナム・ノ国立公園は、石灰岩の山岳地形と熱帯雨林が広がる大規模な自然保護区です。巨大な鍾乳洞や地下河川、多彩な植物群落、アジアゾウやサイなど絶滅危惧動物の生息が確認されています。周辺の先住民族文化や、環境保全と地域経済の両立に向けた協働体制も高く評価されており、今回の推薦では既存登録地からの範囲拡張が焦点です。
東モンゴル草原(モンゴル)
東モンゴル草原は、ユーラシア大陸の中でも特に自然度の高い大草原地域で、チンギス・ハンゆかりの地としても知られます。広大な草原と湿地が希少動植物の生息地となっており、ノガン・バトガルやダイコクヒタキなど絶滅危惧種も確認。遊牧文化の伝統や、自然と人間の共生関係が今なお守られている点が特徴です。
マプート国立公園 (モザンビーク)
モザンビーク南部のマプート国立公園は、海岸線から内陸の湿地・湖沼・サバンナに至る多様な生態系を有する自然保護区です。ゾウやカバ、希少な鳥類や植物群落が生息しており、南アフリカとの国境拡張によって国際的な自然回廊を形成しています。持続可能な観光や地域コミュニティの保全活動も盛んで、生態系サービスの維持がグローバルに評価されています。
2025年に登録見込みの複合遺産
ゴラ・ティワイ複合体(シエラレオネ)
ゴラ・ティワイ複合体は、西アフリカのシエラレオネに位置する、豊かな熱帯雨林と生物多様性、そして先住民族文化の融合した複合遺産です。ゴラ森林はアフリカでも特に原生度の高い生態系を保持し、絶滅危惧種を含む多くの野生動物の生息地となっています。また、隣接するティワイ島は独自の自然環境と、地域住民による伝統的な自然利用・聖地信仰が伝えられています。
生物多様性の保全と、持続可能な伝統文化の継承という2つの観点で世界的な評価が進み、科学調査や地域協働型の保全プロジェクトも展開。自然遺産と文化遺産の両面から、国際社会に向けた価値発信が期待されています。
summary
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新たな世界遺産の誕生にワクワクしますね。
この記事を通して事前に候補を予習しておくことで、皆さんの楽しみも倍増できると幸いです。